2016年07月25日

アメリカが「世界の警察」を辞めた理由

2013年9月10日にテレビ演説の場でオバマ大統領は「米国は世界の警察ではない」と言いました。11年にイラクから米軍を完全撤退させ、アメリカは世界秩序の監視役から手を引きましたが、そもそもなぜ今まで「世界の警察」が続けられていたかといえば、ユーラシア大陸から遠いという地政学的メリットがあるからです。それ故に世界中で起こる戦争を遠くから監視し、パワーバランスを崩しかねない存在が現れた時に徹底して叩くというのがアメリカの外交戦略だったのです。

しかし03年からのイラク戦争の長期化と08年のリーマンショックが決定打となり戦略の変更を余儀なくされました。今年の1月には、アメリカは核開発問題をめぐるイランへの経済制裁を解除しましたが、その裏には金がかかる中東の整理をイランに任せようという思惑があります。シェール革命によって世界最大の産油国となったアメリカにとって、中東はもはや守る価値のない地域であるということです。

代わって今、アメリカは東南アジアの市場の生産性の高さと、世界第2位の経済大国となった中国に気を配るアジア重視戦略に出ています。アメリカと中国は南シナ海をめぐる領有権問題について対立しており、今年1月末には中国が実効支配する西沙諸島周辺をアメリカのイージス艦が航行するなど一色即発の状態で、経済面でもアメリカは昨年10月に大筋合意したTPP(環太平洋経済連携協定)などで対中国包囲網を張りますが、中国もRCEP(東アジア地域包括的経済連携協定)で経済ブロックの構築を進め確執が続いています。

加えて、14年3月にロシアがクリミア併合に乗り出した事で、「新冷戦」時代と呼ばれる程に悪化した両国の関係もアメリカにとっての懸念材料です。今年はアメリカ最大のイベントである大統領選挙が行われますが、誰が大統領になろうとも、中国やロシアとの外交が困難を極めるのは間違いなさそうです。
タグ:国際情勢
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2016年07月22日

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の経済観2

一方、ユダヤ人は古代から住む場所を追われ離散して暮らさざるを得なかったため、物や土地がなくとも稼げるよう、「当人の能力」に経済価値観を置いています。ユダヤ教やキリスト教の聖典である旧約聖書では、申命記などに兄弟(同胞)には利息をつけて金銭を貸してはならないが、異教徒には利子をつけて貸しても良いと書かれています。ユダヤ人はこの教えのもと、同胞間でお金を融通しあいながら、異教徒からは利子を取る金融業を生業とする事で各国の貨幣の両替や為替の技術にも長じていきました。他方、キリスト教は中世を通じて同胞・異教徒を問わず、利子の徴収そのものを完全に禁じ、金融業を”賎業”としてユダヤ人に押し付けました。シェークスピアの「ヴェニスの商人」に出てくる悪役の金貸し、シャイロックもユダヤ人です。

もっとも、13世紀頃からはキリスト教社会でも利子付きの賃借が徐々に認められるようになっていき、16世紀の宗教改革以降、プロテスタント諸国で資本主義が誕生し、さらに産業革命によって経済が活発化するに従い、聖書が定める利子の禁止は空文化していきました。このようにキリスト教は時代を経るにつれ、聖書の教えを現実に則した形に変えていくのが特徴で、例えばイエス・キリストが「金持ちが神の国に入るよりも、ラクダが針の穴を通る方がまだ易しい」と説いている通り、確かに本来キリスト教は、富の増大には否定的で、金持ちは全財産を死ぬ前に教会に寄付することで天国に迎えられると考えられ、宗教世界と経済などの世俗世界は区別されていました。中世カトリックの教会が豪華絢爛なのはこうした背景があったからです。

ところが、宗教改革で誕生したプロテスタントのカルヴァン派は、「救済するしないは神が既に決めている」とする「予定説」を唱え、神から与えられた職業(天職)に真面目に取り組み、利益を得られるのは神に認められている証拠であり、その結果得た利益は自堕落に使うのではなく、さらに努力して増やすことが神の御心にかなう行動であるとしました。政治学者のマックス・ウェーバーは「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」の中で、この考えが資本主義の原動力になっていると論じており、現在におけるアメリカの経済至上主義も、こうしたプロテスタントの経済的な成功を救いの証と見る世界観による、世俗的欲求と宗教的情熱が合わさった経済活動が基盤になっていると見ることができます。同じキリスト教でも宗派によって経済価値観は大きく異なるということです。
タグ:世界史
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2016年07月20日

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の経済観1

歴史上で世界の覇権を握ってきた国々は、必ず拠り所となる宗教を持っており、その覇権を支える経済の背景に「宗教的な価値観」があります。三大宗教として並び称される「ユダヤ教」、「キリスト教」、「イスラム教」ですが、イスラム教は発生時期が開祖である預言者ムハンマドがメッカで神の啓示を受けたと言われる610年頃で最も新しいにもかかわらず、約20年後にはアラビア半島をほぼ統一し、程なくしてシリアやエジプト、ペルシャやインド方面まで、勢力を急速に拡大します。

勢力拡大の方法はユダヤ人やアラブ人など異教徒たちとの「聖戦=ジハード」で、コーランにも「アッラーも最後の日も信じようとせず、アッラーと使徒の禁じたものを禁断とせず、また聖典を頂戴した身でありながら真理の宗教を信奉もせぬ、そういう人々に対しては、先方が進んで貢税を差し出し、平身低頭してくるまで、あくまで闘い続けるがよい」という記述があります。この異教徒に対するジハード主義がイスラム過激派の行動原理とされていますが本来は必ずしも異教徒を叩きのめすものではなく、例えば重い人頭税と土地税に苦しんでいたローマ帝国の領民には、イスラム教徒への改宗を条件に人頭税(ジズヤ)を免除し、逆に改宗せずに服従した場合には人頭税を課していました。

こうした方針は「剣か、コーランか、人頭税か」という表現で広く知られ、当時のイスラム教徒は表向きは異教徒保護のためとしながら暴力的な人頭税の徴収を行い、ユダヤ人などは収入の半分を支払わなければならず、むしろ収奪そのものがジハードの目的であり勢力圏を短期間で急拡大する秘訣でした。

この考えは古代のルールを現代に適用しようとする原理主義者の行動に受け継がれ、2014年、過激派組織「イスラム国(IS)」は、イラク北部のモスルに住むキリスト教徒3万5000人に「改宗するか、人頭税を払うか、街を出るか」と迫り、1世帯につき55万イラクディナール(約4万8000円)を払わせて解放したと言います。ISが土地を求めるのも歴史上、彼らの地の砂漠が交易に欠かせなかった事から、今日でもイスラム教には「土地が富を生む」という発想があるためで、現代では石油も出る事から尚更その傾向を強めていると言えます。
タグ:世界史
posted by 河野 at 16:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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